委員長挨拶
「弁論」とは何でしょうか。
論を弁ずるという字面から、スピーチやディベートは想像しやすいでしょう。ドラマ好きの方や法曹志望の方であれば、裁判における弁論手続を想像されるかもしれません。
これらは「他者に対し口頭で何かを伝える行為」を共通項として括ることができますし、我々学生が競技として取り組む弁論も同じ性質を持っています。
ですが、弁論という競技は喋ることが全てではありません。むしろ、喋るための原稿の準備にこそ、弁論の奥深さが潜んでいます。
社会に対してあなたが抱いた問題意識を要素に分け、どのような実状なのか、なぜその問題が起きているかを分析し、あなたなりの答えを示します。
この答えをどのような表現を用いれば余すことなく聴衆に伝えることができるか、伝えた内容を理解し納得してもらえるかを考え抜き、熟考に熟考を重ねた先にようやく形になるのが発表原稿なのです。
また、これを聞く側の聴衆も、弁士の言葉に真摯に向き合い、温かい野次と鋭い質疑をもって弁士とコミュニケーションをとろうとします。これらが相互に作用することで生まれる議論空間全体を包含させてはじめて、「弁論」の紹介らしいものになるのです。
近年、世論の在り方は大きな変化を見せています。テレビや新聞、ラジオといった既存のメディアに加え、インターネットが普及しSNSが日常を送る上での必須ツールとなった現代では、我々は多方面から情報を受け取ることも、自分の主張を発信することもできるようになりました。
ですが、情報発信者が必ずしも特定の分野に精通した人間ばかりとは限りません。
中途半端な知識や偏った意見、その分野を知らない人の感想などが玉石混交しています。受け取れる情報の総量こそ増加しましたが、同時に誤った意見に惑わされないように自分で精査する能力も必要になりました。
情報を精査し分析し、他者に訴えかけて説得する。
この能力は目先の就職活動だけでなく、今後あなたが生き抜く上で、力強い武器となることでしょう。しかも、同じ環境で切磋琢磨できる人間が、この世界にはたくさんいます。
「勉強がしたい」「人前で喋れるようになりたい」「新しいことがしたい」など、理由は何でも構いません。ここまでの文章を読んで我々の活動に興味を持ってくださった方は、ぜひとも弁論部にお越しください。
法政大学弁論部一同、心よりお待ちしております。
2025年3月
法政大学弁論部
第140代委員長
菊池紘樹